「お父さんはしばらく姿を消すから、お母さんを助けてやってな」
そう言って父は、家族の前から姿を消しました。
高校3年生の秋、自営業であった小さな温泉旅館が倒産したのです。小さい時から自慢の旅館で、将来はこの旅館を国際化したいという夢もありました。それが倒産してまうとは、信じられませんでした。すぐに、私と弟は親戚に預けられました。
時々、自分の家に行くと家中の窓という窓に厚い毛布が張られていました。夜は電気もまともにつけられず、祖母と母が文字とおり隠れている生活を見て、愕然としました。
高校では進路を決める時期にあり、私は、大学で英語を身に着けたいと思っていました。
しかし、そんなお金はないと思いました。進学をあきらめる決心をし、母に打ち明けた時、母の答えは意外でした。
「あんたが大学に受かってもらわにゃ困る。受かったらそこにみんなで引っ越すから」と言われたのです。その時は、あまりの迫力に言葉を返すことができず、とにかく必死で受験勉強をしました。そして大学に入学すると同時に、家族そろって引っ越しました。
そしてそこに、人生の転機が待っていたのです。
ある日、大学の友人から「どうしたら悔いのない大学生活、ひいては人生になるのか。その答えが分かる集まりがあるから行って話を聞いてみない?」と言われた時、「この世の中に、こんな前向きな人たちが存在したのか!」と驚きました。
それまで、友達にも言えない、大きな虚しさと孤独感を抱えていたので、「求めてきた何かがあるかもしれない」と思い、話を聞きました。
それが親鸞聖人との出会いでした。
その後、親鸞聖人のみ教えを続けて聞かせていただくうちに、
「なぜ苦しくとも生きねばならないのか」
「どうすれば真の幸福になれるのか」
一番知りたいことの答えが親鸞聖人のみ教えの中にあることが分かってきました。遇い難い真実に遇わせて頂けたと感動しました。
そして今になって知らされるのは、家族そろって引っ越して来たのは「家族ともども仏法聞けよ」との阿弥陀仏の善巧方便に違いないということです。
永遠の本当の家族になれるよう、進ませていただきたいと思います。